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デンタスの目指す姿

デンタスの目指す姿 デンタスの目指す姿

「歯」という大切な器官と歯科技工産業の抱えるさまざまな課題

歯は、私たちの生命を支える「食べる」という行為に重要な最初の消化器官というだけでなく、全身の健康に影響を及ぼす大切な器官です。また、人が精神的にも社会的にも充実した人生を送るために大切な「話す」という行為にも歯の状態が大きく関わっています。

現在、65歳以上の高齢者のほぼすべての人がクラウンや義歯など何らかの歯科技工物を装着しています。高齢人口の急激な増加に伴って歯科技工物の需要は年々拡大しており、2015年の入れ歯人口は推定3,300万人、日本人の3人に1人が入れ歯を使用して生活していると言われます

※グラクソ・スミスクライン調べ

需要が増える一方で、供給側はこれと逆行するさまざまな問題を抱えています。歯科技工物は、現在も歯科技工士の手作業で作られていますが、歯科技工所はどこも零細であり、4名以上の歯科技工士を抱える比較的大きな会社はわずか6%で、それ以外は零細な個人経営となっています。多くの歯科技工所では、悪い作業環境で長時間労働を余儀なくされており、きつい、汚い、危険の3Kという共通の問題を抱えています。こうした事情から、歯科技工士のなり手が年々減っており、全国の歯科技工学校卒業生は2005年には約2,272名でしたが、2014年には半減し、1,147名まで落ち込みました。さらに、卒業後に就労した場合も離職者が後を絶たず、30歳未満の若い歯科技工士の離職率は70%を超えています。

歯科技工士の総数が減少するとともに、人材の高齢化も急速に進行しており、総数34,600名のうち50歳以上の歯科技工士が全体の43%を占めています。彼らが徐々に引退していく現在は、歯科技工産業全体の生産力は顕著に縮小しています。このまま、何の手も打たなければ、歯科技工物の供給がままならない状況に陥る懸念があります。

歯科技工物の生産プロセスを革新し、業界を牽引

デンタスは、2005年に「モデルカップシステム」を開発し、クラウンブリッジの製作工程の大幅な時間短縮を図り、効率改善と生産性向上に大きく貢献してきました。

現在は、歯科技工物の自動化生産技術「デンタルラボシステム」の開発と普及に取り組んでいます。アメリカや中国では、すでにCAD/CAMを活用した自動化が進んでおり、従業員2,000名規模の歯科技工工場が誕生し、労働集約型の産業から装置産業へと急速に変貌を遂げています。諸外国に遅れをとっている日本でも、2014年4月、CAD/CAMによるクラウンに対する保険適用が 開始されました。

デンタスは、業界に先駆け、2010年より徳島プリントセンターで、CAD/CAMシステムを導入し、スキャン、デザイン、3Dプリントによる製作を開始しており、作業工程の大幅な短縮と効率化を実現するとともに、安定した高品質の製品の供給を行っています。

さらにデンタスでは、CAD/CAMシステムの導入を機に、歯科技工技術の海外移転にも取り組んでいます。2011年、フィリピン・セブ島にセブ・デンタス・インターナショナル・インク(CDII)を設立、現地大学との連携により人材育成を開始し、2013年5月には、本格的な事業化が実現しています。従来、これらの製品の品質は歯科技工士の経験値に支えられていましたが、デザイン工程にコンピューターが導入されたことにより、品質の安定性とスピードの確保が容易になりました。熟練歯科技工士への労働負荷を軽減し、生産性の向上が実現しています。

義歯の生産プロセスの完全自動化を目指した開発

そして、現在、義歯製造の生産プロセス革新に挑戦しています。クラウンなどの単一素材の歯科技工物については、自動化が進みつつありますが、金属や樹脂など複数の素材を合わせる義歯については、いまだに歯科技工士の手作業に大きく依存しています。デンタスは、工程の完全自動化により、高品質の義歯を量産する生産プロセスの確立を目指して研究開発に取り組んでいます。2014年からは、岡山大学、そして徳島大学とともに産学官連携によるプロジェクトを組み、異種歯科材料の高精度融合化技術の開発に着手しました。これは、樹脂や金属などを組み合わせるシステムで、これに成功すると国内初の全面自動化生産システムが確立します。デンタスでは、これらの完成にあわせて新工場の建設を予定しています。

このような義歯の生産プロセス革新の実現は、産業全体が抱えるさまざまな課題の解決に向け、大きな一歩となるでしょう。歯科技工所の経営上の課題はもちろん、遅れていた義歯の材料技術や生産技術の進化が加速すると考えられます。たとえば、現状、義歯に使われている樹脂は手作業で加工できるものに限られていますが、耐久性や品質の向上、人体への影響という観点からはまだまだ改良の余地があります。今後、義歯の生産プロセス革新が進めば、同時に、より優れた新素材の開発や普及が進むでしょう。

また、現在の義歯は、「本来の人の歯に戻すこと」をゴールに設計されていますが、3Dデザインができるようになったいま、細部にわたる強度計算が可能になりました。今後は、構造力学の視点を取り入れ、人の歯を超えて器具としての機能に特化した設計を施すことで、義歯の機能、性能が格段に向上する可能性も秘めています。

義歯生産技術開発プロジェクト
(経産省採択案件)

岡山大学、徳島大学、徳島県立工業技術センター、デンタスによる
産学官連携によるプロジェクト「異種歯科材料の高精度融合化技術の開発」

開発のねらい

市場を抜本的に改革し「消費者が義歯を選ぶ時代」をつくる

供給側の課題とともに、歯科技工物の市場における課題は、消費者にもさまざまな不都合をもたらしています。まず、価格の問題です。義歯の価格は保険適用と自由診療で分かれており、消費者はかかりつけ医師が提示した価格を選択して義歯を購入するのが一般的です。その際、眼鏡のように、色や素材、品質を吟味したり、ブランドを選択する余地はありません。また、購入した品物の価格が適正かどうかを消費者が判断することも容易ではありません。

そして、もうひとつは用途の問題です。多くの人が義歯を1種類しか持たずに日常を過ごされています。現在普及する義歯は「食品をしっかりと咀嚼する」という機能を中心に設計されており、衛生面を重視するため食物が詰まらないように歯間が埋められています。しかし、これでははっきりと発声する場面では義歯が浮いてしまい、うまくいきません。こうした問題は咀嚼用、発音用と2種類の義歯を持って使い分けることで簡単に解決するはずです。

このように、義歯という製品は消費者のニーズへの対応がたいへん遅れているのです。眼鏡やコンタクトレンズを用途に応じて使い分ける現代に、義歯も用途やブランドを選び、消費者自身の選択ができても良いはずです。そして、そのような消費者本位の市場へと進化することにより、市場全体が活性化し、拡大していくことにつながるでしょう。

日本の歯科医療と歯科技工技術を世界に向けて発信したい

デンタスの事業の将来像として私が描いているビジョンは、眼鏡店のように消費者の方々に自由に立ち寄っていただき、材質や価格、用途、お好みによって商品を選択して注文し、購入できる義歯ストアチェーンを全国に普及させることです。消費者が自分に合った高い付加価値の義歯を手軽に、廉価に手に入れられる、消費者本位のビジネスモデルを実現したいと考えています。そして、このモデルは、歯科技工産業、および、日本の歯科医療全体に新たな機会をもたらすことにつながります。さらに、これらの産業における課題、市場における課題の双方をクリアしていくことで、日本の歯科技工産業はより強い産業となり、国内だけでなく、東南アジアをはじめとした海外の市場に進出するチャンスが生まれるでしょう。

デンタスは、現在、歯科技工産業の未来についてビジョンを共有する全国の歯科技工所100事業所とともにデンタスクラブを組織しています。加えて、全国の歯科医師の皆様にもご賛同いただき、海外市場を視野に入れた産業の構造改革を目指しています。

日本の歯科医療と歯科技工技術を世界に向けて発信する、そんな日がもう間もなくやってくると、私は確信しています。